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オミクロンのもとで社会の基盤が揺らぐ構造【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」38

 

◆逼迫の経路は二つある

 

 医療の逼迫とは、医療にたいする需要に比べ、供給が追いつかなくなること。

 経済で言えば物価が上がる状態にあたります。

 よって新型コロナウイルス感染症による医療の逼迫は、次の二つの条件のどちらかが満たされれば引き起こされる。

 

(A)感染の拡大により、医療を必要とする感染者、とくに重症者をはじめとする入院患者が増える(=需要の増加)。

(B)活動できる医療従事者の数が減る(=供給の減少)。

 

 オミクロンは重症化率が低い。

 つまり(A)の経路による医療逼迫は、比較的起こりにくいことになります。

 いや、感染者の数があまりに急速に増えたら最後、起きてしまうかも知れませんが。

 

 問題は(B)。

 沖縄の状況はこうです。

 

 【沖縄 医療従事者の欠勤が最多628人 濃厚接触の隔離期間短縮も 自宅療養6000人迫る

 新型コロナウイルスに感染したり、濃厚接触者になったりして欠勤している県内の医療従事者の数は(1月)12日、前日比125人増の628人となり過去最多を更新した。医療提供体制の崩壊を避けるため、県は15日にも専門家会議を開き、医療に従事する濃厚接触者の隔離期間短縮などを議論する】

 

 欠勤者数は翌13日には989人に達し、コロナ専用病床を減らさねばならない事態に発展します。

 同県の新型コロナ対策本部医療コーディネーター・佐々木秀章医師いわく。

 

 【一病院で30人くらいの方が働けない状態。この状態がさらに悪化すればコロナのみならず救急医療も瀬戸際になって崩壊になってしまうのではないか】

(※)テレ朝news「沖縄『綱渡りの状態』」、2022112日。つづく小池・吉村両知事の発言についても同様。

 

 沖縄に限った話ではありません。

 ついでに、医療に限った話でもない。

 東京都の小池百合子知事いわく。

 

 【(感染者・濃厚接触者が急速に増えると)医療現場だけではなく、流通・運輸など社会の基盤そのものが大きく揺らぐ】

 

 大阪府の吉村洋文知事いわく。

 

 【エッセンシャルワーカーのなかで(感染者・濃厚接触者が)増えてくると、医療機関を含め、この社会のインフラに大きな支障が生じる可能性を非常に危惧している】

 

 小池知事は112日、経済同友会代表幹事、東京商工会議所会頭、経団連会長とあいついで会談、感染拡大によって1割あまりの従業員が欠勤しても事業が継続できるようなプランの策定・点検を要望。

 

 翌13日に開かれた都のモニタリング会議では、専門家からこんな指摘がなされています。

 

 【医療従事者などが感染者や濃厚接触者となり、就業制限を受ける人が多数発生すれば、病床が空いていても、マンパワー不足で患者の受け入れができなくなり(、)通常の医療も含めた医療提供体制がひっ迫することが予想される】

 

 【すべての都民が、感染者や濃厚接触者となるリスクが高まり、社会活動の停止を余儀なくされる可能性がある】

 

 重症化率の低さなど、もはや問題ではなくなっている!

 新刊『感染の令和 または あらかじめ失われた日本へ』で詳細に論じたように、疫病との戦いは、本質的に負け戦なのです。

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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